可児亜理さんのベートーヴェン・ピアノソナタの
コンサートに行きました。
32番がプログラムに含まれていたので足を
運びましたが、可児さんのことは全く知らず、
正直なところ、あまり期待していませんでした。
ハ短調で揃えたプログラムの前半の5・8番は
旋律の歌い方が好みではなく、また音数が多く
なると団子になって聴こえるなどイマイチで、
32番を聴かずに帰ろうかと思ってしまいました。
しかし、32番は不思議な曲です。
全曲演奏のラストという思いからか、可児さんの
祈りを込めるような演奏。細部へのこだわりが
この曲では構造を壊すことにならず、繊細な
音のニュアンスが曲に深みを与えていきます。
無神経な観客の咳にも、気を散らすことなく
思いの詰まった素敵な32番を弾き切りました。
やはりこの曲は、技巧派が淡々と弾くよりも、多少
技が拙くても、気持ちが込められているか否かで
その味わいが左右されるからこその名曲、です。 |
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