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12月4日
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可児亜理さんのベートーヴェン・ピアノソナタの

コンサートに行きました。

32番がプログラムに含まれていたので足を

運びましたが、可児さんのことは全く知らず、

正直なところ、あまり期待していませんでした。

ハ短調で揃えたプログラムの前半の5・8番は

旋律の歌い方が好みではなく、また音数が多く

なると団子になって聴こえるなどイマイチで、

32番を聴かずに帰ろうかと思ってしまいました。

しかし、32番は不思議な曲です。

全曲演奏のラストという思いからか、可児さんの

祈りを込めるような演奏。細部へのこだわりが

この曲では構造を壊すことにならず、繊細な

音のニュアンスが曲に深みを与えていきます。

無神経な観客の咳にも、気を散らすことなく

思いの詰まった素敵な32番を弾き切りました。

やはりこの曲は、技巧派が淡々と弾くよりも、多少

技が拙くても、気持ちが込められているか否かで

その味わいが左右されるからこその名曲、です。

sketch736

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